発端
内部告発文書作成と送付(2024年3月)
- 3月-元県職員が7項目に及ぶ告発文書を作成し、報道各社や一部の県議に匿名で送付。
- 5月-県側が告発文書を把握し、作成者を特定して懲戒処分を下す。
- 斎藤知事は告発文の内容を全面的に否定するが、後に一部の事実が含まれていたことが判明。
- 6月-県議会で真相究明のために百条委員会が設置される。告発文作成者の元県職員は証言を行う予定でしたが2024年7月に亡くなる。
告発要旨
・五百籏頭眞先生の逝去経緯
歴史学者である五百籏頭眞氏が急性大動脈解離で亡くなったことについて、片山副知事が理事長職と副理事長の解任を一方的に告げたことが、五百籏頭氏の命を縮めた原因とされている。
・選挙投票依頼行脚
2025年の知事選挙に向けて斎藤知事自身が投票依頼を行う。公職選挙法違反の疑い。
・贈答品の山
斎藤知事のおねだり体質が問題視される。ロードバイクやゴルフクラブなどを贈られている。
・政治資金パーティー問題
斎藤知事の政治資金パーティーで産業労働部地域経済課長が圧力をかけ、パーティ券の販売ノルマを課す。
生い立ち
斎藤元彦知事は1977年に兵庫県で生まれました。幼少期から勉強熱心で、中学受験では六甲学院中学校を目指すも不合格となり、愛媛県の愛光中学校に入学しました。6年間の寮生活を送り、中学校ではソフトボール部に所属していました。高校では寮長を務め、リーダーシップを発揮していました。
クラシック
経歴
高校卒業後、1年間の浪人生活を経て東京大学に入学しました。大学在学中は授業にはあまり出ず、留年することもありましたが、育英会からの奨学金を受けて学費の問題を乗り越えました。総務省に入省後、様々な地方自治体での勤務を経験し、2021年に兵庫県知事に就任しました。
総務省時代
2002年に東京大学経済学部を卒業後、総務省に入省しました。総務省では大臣官房総務課、自治財政局公営企業課地域企業経営企画室などで勤務し、2008年には新潟県佐渡市に出向して企画財政部長を務めました。この間、地方自治体での実務経験を積み、地域経営に関する知識を深めました。
知事時代
斎藤元彦氏は、2021年に兵庫県知事に就任しました。彼は総務省出身で、地方行政や財政に関する豊富な経験を持っています。知事就任後、コロナ対策をはじめ、兵庫県の経済復興や少子高齢化対策に力を入れ、「誰一人取り残さない温かい県政」を目指すことを掲げました。
また、斎藤知事は「新県政推進室」を立ち上げ、知事直轄の改革チームを構成して、県政の推進に取り組んでいました。
彼は自民党と維新の党の推薦を受け、長年続いた井戸敏三知事の県政からの「刷新」を掲げました。選挙の争点には、コロナ対策や人口減少への対応などがあり、これまでの県政に対する変革を望む声が高まり、斎藤氏の「新しい兵庫をつくる」というビジョンが県民に受け入れられたといえます。
当時の評判については、選挙戦での積極的な姿勢やフレッシュなイメージが好感を得ており、就任後の斎藤氏は、給与の大幅カットや公用車の見直しなど、財政改革に積極的に取り組みました。また、県立大学の授業料無償化や財政調整基金の増加といった成果も挙げています。
元県職員
兵庫県の斎藤元彦知事に対するパワハラ告発問題は、深刻な事態を引き起こしました。西播磨県民局長を務めていた元県職員(60)が、斎藤知事や側近によるパワハラを告発した後の7月に自殺したことが報じられています。
この元職員は、今年3月、斎藤知事の指示を受けた人事に関するパワハラや違法行為に関する文書を告発した後、解任、同月末の退職を認められずに保留にされました。
その解任の際には、知事側近による厳しい尋問が行われ、その様子が音声データで公開されています。また、斎藤知事の側近らがこの元職員を「つるし上げ」ようとする計画があったことも明らかにされています。5月には、文書の核心部分が事実でないとして、別の理由と合わせて男性を停職3か月の懲戒処分にされました。
この時の記者会見(3月27日)で斎藤知事は、名誉棄損などの告訴も含め
「法的手続きの検討を進めている」
「ありもしないことを並べた内容を作った」
「絶対許されないような行為をした職員が出てきた」
「不満があるからと言って、しかも業務中に、嘘八百含めて、文書を作って流す行為は公務員として失格です」
と罵詈雑言を重ねています。
パワハラ疑惑
元職員の自殺後、斎藤知事が職員に対して不当な圧力をかけたとするパワハラ疑惑が公に。告発文書では、知事が職員を叱責したり、強引な指示を出したりしたとの具体的な記述があり、告発者を探すよう知事が指示したとの疑惑も浮上しました。
・職員への過剰な業務要求 – 長時間労働を強制し、適切な休暇を与えなかった。
・部下への厳しい叱責 – 公然と部下を叱責することが多かった。
・職員とのコミュニケーション不足 – すれ違っても挨拶をしない、無視する。
・一方的な命令口調 – 職員の意見を聞かず、一方的な指示を出すことが多かった。
・職員への人格否定的な発言 – 職員に対して「使えない」などの否定的な言葉を投げかける。
・辞職を求める電話が殺到 – 辞職を求める県民からの電話が殺到し、職員が対応に追われる。
・対応する職員への暴言 – 苦情の電話で「死ね」などの暴言を受けた職員がいる。
・業務遅延の責任を職員に押し付ける – 自身の指示ミスを部下に責任転嫁する。
・過剰なパフォーマンス要求 – 現実的でない成果を短期間で求める。
・会議での一方的な話し方 – 会議で部下の意見を聞かず、自分の意見のみを押し付ける。
・他部署への応援強制 – 職員を別部署に応援派遣させ、通常業務に支障をきたす。
・辞職者が続出 – パワハラの影響で職員が次々と辞職。
・職員のメンタルヘルス悪化 – 職員がストレスから精神的に追い込まれている。
・知事と職員の対立激化 – 知事の強権的な態度により、職員との対立が深まる。
・職員の自殺 – 長時間労働や叱責が原因で職員が自殺したとされる。
・適切な指導不足 – 職員のミスに対して適切な指導をせず、感情的に対応する。
おねだり疑惑
兵庫県の斎藤元彦知事に対する「おねだり」疑惑では、いくつかの贈答品や物品の要求が話題となりました。
・高級革ジャン-斎藤知事は2023年2月、兵庫県の革製品業者と面会した際に、40万円相当の革ジャンを気に入り、「これはいい。もらえないか」と発言しました。しかし、業者からは「無償提供はできない」と断られました。
・カニの持ち帰り-斎藤知事は、日本海側を視察するたびにカニを持ち帰っていたとの証言が出ています。視察の際には頻繁にカニを受け取っていたため、関係者からは「来ないでほしい」とまで言われたという声も上がっています。
・牡蠣やワイン、枝豆、日本酒など-これらの県産品も、知事が受け取った贈答品として報告されています。知事はこれについて、「県のPRの一環」としつつ、個人的に味わうこともあったと説明しています。
・ゴルフクラブー視察先でゴルフクラブのセットを受け取った後、気に入らなかったために交換を要求したと報じられています。
・視察先で用意されていた茶菓子をすべて持ち帰る-訪問したほかの職員の分も用意されているのに独り占めをしていた。
斎藤知事が受領した贈答品は計137点とされている。斎藤知事は贈答品を多数受け取ったことを認め「社交儀礼の範囲内で問題ない」と説明しています。
答弁
斎藤元彦知事が百条委員会や記者からの質問に対して答えた主な内容です。
・告発者探しについて「私の指示で告発者を探すよう指示した」
・告発文書について「嘘八百」「告発文書は誹謗中傷性が高く、公益通報には該当しない」
・道義的責任「道義的責任とは何か分からないので、明確なコメントはできない」
・辞職の可能性「辞職するつもりはない。県民に選ばれた知事として続投する意思がある」
・元職員の自殺について「こうした状況になったことは、悔しい思いがある」
・パワハラの事実認識「記憶にない」「職員への態度に関しては、問題はないと認識している」
・叱責について「職務上の指導として、適切な対応を行った」
・トップとしての責任「トップとしての責任は重く感じているが、違法性はないと確信している」
・告発者探しの指示の違法性「告発者を探すこと自体に違法性はないと考えている」
・記者からの質問への対応「質問に対しては誠実に答えているが、誤解が多いと感じている」
・元職員の自殺後の対応「元職員に対して深い哀悼の意を表しているが、個別のケースについては 詳細を明かせない」
・この事態について「私は完ぺきな人間ではない」「元職員の自殺や一連の事態については深く反省しているが、直接的な法的な責任はない」
・記者会見での感情表現「県民のために尽力してきたが、感情を抑えられない時もあった」
・人事に関する不正疑惑「人事に関する疑惑は全くない」
・辞職について「県民のために成し遂げたい政策が多く、途中で投げ出すことはできない」
・報道機関への不当な聴取について-突然の涙
斎藤知事は一貫して自身の責任を強く否定し、政策推進への意欲を強調しています。
不信任案可決
斎藤元彦知事の不信任案可決に至るまでの経緯は、複数の問題が積み重なった結果です。
最初のきっかけは、元兵庫県職員が斎藤知事のパワハラを告発する文書を作成し、その後自殺するという悲劇的な事件でした。告発には、斎藤知事が職員に対して強圧的な態度を取ったことや、人事への不当な干渉が含まれており、さらにこの告発者を探す指示を出したとされています。これに対して斎藤知事は、百条委員会で告発者探しの指示を認めたものの、違法性はないと主張しました。また、「道義的責任」についても答弁を避け、さらなる批判を招きました。
この対応に対し、県議会は強く反発し、全議員が辞職を求める状況となりました。斎藤知事は辞職を拒否し、政策実現への意欲を強調して続投を主張しましたが、不信任案が提出され、今月19日に兵庫県議会で可決されました。
今後、斎藤知事には10日以内に辞職するか、議会を解散する選択肢が与えられますが、知事選や議会選挙にかかる費用が大きな問題となっており、彼の決断が注目されています。
兵庫県庁の現在の状況
斎藤知事に対する不信任決議案が可決されたこともあり、県政は深刻な停滞と混乱を極めています。県庁の業務は危機的状況に陥っており、多くの職員が知事の対応に疲弊し、辞職者も増加しています。特に、通常業務が止まるほどの電話対応が必要となっている現状は、県庁全体の機能に大きな影響を与えています。
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